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2011年12月31日

『水戸黄門』は日本のテレビ産業の象徴だった

久々のブログ投稿となります。
42年間の長きにわたり“国民的時代劇”番組として国民に親しまれてきた、パナソニックグループ提供の時代劇番組『水戸黄門』が19日の最終回2時間スペシャルを最後にその歴史に幕を下ろしました。
『水戸黄門』は昭和44年8月にスタート、ご老公一行が全国を行脚し、悪を懲らしめるスタイルが親しまれ、番組終盤あの立ち回りシーン、格さんが「静まれ!静まれ!この紋所が目に入らぬか!」と印籠を見せて正体を明かす場面が人気を博しました。昭和54年2月5日放送の第9部第27話では43.7%もの視聴率を記録しました。また、「疾風のお絹」役の由美かおるさんの入浴シーンも人気を集めました。また、番組はマンネリ化の防止のため、マンネリを防ぐため6~9ヶ月を1シーズンとし、『江戸を斬る』『大岡越前』と交代で放送されていました。43シーズン通算の放送回数は1,227回にも上りました。
私にとっては今年7月にこのブログでも申しましたように、10年前、NHK・Gテレの『生きもの地球紀行』という、柳生博さんと宮崎美子さんがナレーターを務める自然紀行の番組、今も小学校の愛唱歌として歌われているエンディングテーマの『ビリーブ』が流れて番組が終わったあと、チャンネルを10チャンネルに変えて『水戸黄門』の立ちまわりシーン、そして葵の紋所が出るというのを見るのが、月曜夜のお楽しみでした。現在も『鶴瓶の家族に乾杯』が終わったあとに『水戸黄門』の紋所の時間となっていましたが、来年1月以降、『鶴瓶の家族に乾杯』が終わったあとにチャンネルを3チャンネルに変えても、『水戸黄門』の紋所の時間が見られなくなるのは寂しいかぎりです。
なぜ、このように月曜夜のお楽しみがなくなってしまったのか、その理由は2つあります。
1つは、近年のストーリー、キャスティングの失敗。「疾風のお絹」役の由美かおるさんが第41シーズン限りで卒業した後を受け、昨年10月の第42シーズンから、格さん助さん役を的場浩司と東幹久にリニューアルし、由美かおるに代わる女性新キャラクターに雛形あきこさんを起用、さらに若い視聴者を取り込もうと、ストーリーを複雑化し、紋所の出し方や、出す時間帯を見直しました。これが失敗となり、視聴率も9%台に低迷。加えて時代劇番組そのものの見直しがあり、NHKでさえ、今年3月までGテレの土曜日夜に編成していた時代劇番組をBSPに移行するほどでした。
もう1つは、テレビ放送の完全デジタル化に起因するテレビ産業そのものの衰退。
ご存じのように、東日本大震災で甚大な被害を出した岩手県、宮城県、福島県を除いた44都道府県で、今年7月24日にアナログテレビ放送が終了し、テレビ放送は完全デジタル化されました。前述の3県でも来年3月いっぱいで、アナログテレビ放送が終了する予定です。
この“完全地デジ化”を前に、家電業界ではデジタル放送対応のテレビ受像器の販売に全力を挙げてきました。しかし、アナログテレビ放送が終了し、テレビ特需が過ぎ去ると、テレビの売れ行きは落ち込み、大画面の薄型テレビの値段は50型で15万円を切るほどに値崩れしました。メーカー各社とも、最近は3D(三次元)映像に対応したものや、ハードディスクなどの録画機能を搭載したものなどを市場に投入していますが、抜本的な売り上げの回復には至っていません。
42年間にわたり『水戸黄門』を一貫して提供し続けてきたパナソニックも、大画面プラズマテレビのトップメーカーだったのが最近では韓国や中国など新興国との競争が激しくなり、今年10月31日にはついに、半世紀にわたりテレビ受像機を生産してきた茨木工場でのテレビ受像機生産を終了しました。『水戸黄門』終了後の来年1月には、これまで兄弟会社として事業をともにしてきたパナソニック電工を吸収合併、さらにその昔、日曜朝8時に放送していた『兼高かおる世界の旅』を提供していた三洋電機も、事業を解体して子会社に統合するという、大規模な事業再編を敢行します。
『水戸黄門』のあと、年末年始特別編成を挟んで1月9日からは、宮部みゆきさんの同名小説をドラマ化した『ステップファザー・ステップ』が放送されます。(9日は午後7時から2話分を一挙放送)この作品も、パナソニックグループの1社提供ですが、『水戸黄門』終了を機に、半世紀以上にわたって月曜午後8時枠で放送されてきた『パナソニック・ドラマシアター』枠の廃止、すなわちパナソニックがスポンサー撤退することも予想されます。もし、これが現実のものとなれば、“家電の王様”“娯楽の王様”としてのテレビ産業の衰退を物語ることになるでしょう。
『水戸黄門』以外にも、アナログ放送の歴史を支えてきた番組が次々と終了していきました。
『3年B組金八先生』
昭和54年10月にスタートし、8シリーズ、単発スペシャル12本が制作されてきたこの作品は、15歳の妊娠問題や校内暴力など、その時代の中学生をとりまく問題をドラマ化し、また、生徒役で多くのスターを輩出しました。長年にわたり金八先生を演じてきた武田鉄矢さんも62歳、そして番組制作の陣頭指揮を執ってきた柳井満プロデューサーも、平成7年にTBSテレビ定年後も嘱託社員として金八先生の制作のかたわら、多くの若手スタッフの育成にあたってきたものの76歳。今年3月27日放送の4時間あまりにわたるスペシャルで、32年間の歴史を閉じました。(視聴率19.7%)その武田鉄矢さん、今年10月に大動脈弁狭窄症の手術を受けたとか。
『渡る世間は鬼ばかり』
飲食店を舞台に描かれる、橋田壽賀子脚本のホームドラマ。平成2年にスタート、以後隔年ごとに1年間のシリーズで放送され、『ザ・ベストテン』亡き後の木曜夜9時の人気番組として人気を集めてきましたが、番組スタートから20年の区切りということで、出演者も、そして脚本を書いてきた橋田さんも、そして番組制作の陣頭指揮を執ってきた石井ふく子プロデューサーも高齢であり、加えて岡倉大吉役を演じてきた藤岡琢也さんも亡くなったことから、出演者や橋田さん、石井さんがまだ健在なうちに番組を終了させることになりました。今年9月29日に放送された最終回2時間スペシャルは、22.2%の視聴率で締めくくりました。
そして、沖縄の正月といえばこの番組、『新春民謡紅白歌合戦』。
毎年正月に沖縄県内で活躍する民謡歌手が紅白に分かれて歌を披露し合う、昭和37年にスタートしたRBCテレビ新春恒例の民謡番組。日本国内では沖縄県のみの放送でしたが、太平洋を越えハワイや南米のテレビ局にもネットされ、現地の沖縄系移民にも沖縄からの正月の沖縄民謡に、沖縄を懐かしむ視聴者の姿もありました。しかし昨年、メインスポンサーのクレジットカード会社がスポンサー撤退、加えて公開収録を行うのに必要なホールの借り賃も行政改革の影響で高騰、「もう民謡で歌合戦をやる時代は終わった」ということで平成22年を最後に48年の歴史に終止符。今年は、『世界のウチナーンチュ大会』をテーマに、ベテラン民謡歌手登川誠仁さんの主演での普通の民謡番組『おきなわ春夏秋冬~海を越えた島唄』を放送しました。来年も元日に『おきなわ春夏秋冬2012』を放送します。来年は沖縄祖国復帰40周年の年。民謡を通して、時代の波に翻弄されて来た沖縄の戦後の歴史を振り返ります。あすの元日、午後3時5分~4時53分、沖縄県のみの放送です。
51年の長きにわたり本土からの人気番組から沖縄の文化までを発信し、全琉の家庭を結んできたRBCテレビのアナログ放送は、平成23年7月24日午後11時54分、その昔、RBCラジオのホームソングとして誕生した、普久原恒男作曲の名曲『芭蕉譜』のフルート、ピアノ、バイオリンのアンサンブルの調べが流れる中、51年間の歴史に幕を閉じました。しかも、
「これまで51年間の長きにわたり、RBCテレビ・アナログ10チャンネルをご覧くださいまして誠にありがとうございました。」
のあいさつの前に、テレビマスター室での遠隔操作で、送信機の電源が落とされました。
そして、金八先生、渡鬼、民謡紅白、そして水戸黄門。
これらアナログ放送の歴史を彩った人気番組が相次いで茶の間から姿を消す。
このことは、7年8ヶ月にわたるアナログからデジタルへの移行という中で、視聴者のテレビ離れが進み、放送番組の内容がうすれてしまったという感じがしました。
とりわけ、大手家電メーカーが1社提供してきた『水戸黄門』の終焉は、“家電の王様”“娯楽の王様”としてのテレビ産業の衰退を感じさせる出来事となりました。
国策として推し進められてきたテレビ放送のデジタル化が、“視聴者への高品質な番組の提供”という目的ではなく“デジタル化によるテレビ放送周波数帯の集約と空いた周波数帯の他目的への転用”という目的にとどまってしまうのか?
あすから始まる2012年、テレビ産業がますます衰退していくのかが懸念されます。

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