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2005年6月19日

JR宝塚線運行再開、新たな旅立ちへ。

4月25日に106名の死者と500人余りの負傷者を出す大惨事となった脱線事故により運行を中断していたJR西日本の宝塚線・宝塚-尼崎間が、きょう午前5時から運行を再開しました。事故以来、55日ぶりの運行再開です。
JR宝塚線の事故をめぐっては、電車の増発・スピードアップという余裕のないダイヤ編成が図られたり、安全確保のための装置、いわゆるATS-Pの整備が後回しにされたり、また列車の運行を少しでも遅らせた運転士に対する“日勤教育”など、JR西日本の利益優先・安全後回しという体質が週刊誌やテレビ番組などで取りざたされていました。
宝塚-尼崎間が運休していたとき、宝塚-大阪間は阪急宝塚線で代替輸送していました。JRだと23分でいくところが、阪急だと快速急行で30分、急行だと35分かかります。たとえば、事故を起こした午前9時台の同志社前行きで見ていくと、快速急行の運行は午前10時~午後4時までしかなく、この時間は急行が一番速い電車となります。そして梅田から東西線の乗り場である北新地駅まで歩いていかなければなりません。梅田から北新地駅まで、徒歩10分かかります。そして北新地駅から東西線に乗って同志社前方面へ、ということになります。直通なら1時間12分かかるところが、乗り換えなどで1時間30~40分もかかるということになっていました。しかも、阪急宝塚線はJRの不通の影響で大混雑、痴漢の被害も多発しました。
JR西日本では運転再開に際し、「ATS-P等の整備、ダイヤの見直しとそれにともなう乗務員の訓練等を踏まえ、安全を十分確保した上で、本日を迎えました。また今後、安全の上に安全を重ねた列車運行に努めてまいることを、ここにお約束いたします。」としています。
JR西日本では通勤・通学など生活に密着した電車から、ビジネスや旅行に便利な都市と都市の間を結ぶ特急列車、新幹線に至るまで、多彩な電車を運行しています。民営化後、JR各社は整備部門や駅業務など人的アウトソースなどで人件費を抑えたりするなどしていますが、整備部門や保線部門、駅業務、運転士など、会社が一丸となってお客様に安心して利用してもらえる鉄道を構築する、これがJR西日本のみならず、JR各社に課された課題だと思います。それはまた、この事故で尊い命を奪われた106名の御霊、そして遺族への供養だと思います。
6月19日午前5時、JR宝塚線の始発電車は、垣内剛社長が運転室に乗車する中、学研都市線の木津駅へ向けて発車していきました。5時20分頃、悲劇となった事故現場では、南谷昌二郎会長始め多くの関係者が見守る中、時速約30㎞のスピードで始発電車が通過していきました。JR西日本の新たな旅立ちの瞬間です。
(今回の宝塚線の脱線事故のために、各地で予定されていた工場や電車車庫などの一般公開などのイベントは今年度は中止となりました。)

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2005年6月 4日

競争激化が招いたJR宝塚線の悲劇(その4)

NTT東日本、7月にもアウトソーシング子会社再編へ。
5月12日、北海道・東北・関東・甲信越地区17都道県をサービスエリアに抱えるNTT東日本は“第2次構造改革”と称して、7月1日付で傘下のアウトソーシング子会社の統合、再編に乗り出すと発表しました。
「お客様のワンストップショッピングニーズへの対応強化、業務のフロースルー化による更なる効率化等によるお客様サービスの向上を図る。」「光・IP時代に対応したネットワーク構築・運営の効率化・サービスレベル向上、ネットワーク系技術者の効率的な活用を図る。」というのがねらいです。
NTT東日本は3年前の“第1次構造改革”で県域支店の業務のうち、法人営業業務を除く全ての業務を都道県域の営業系・設備系・共通系の3つのアウトソーシング会社に委託し、社員約5万人を転籍・出向させました。NTT西日本同様、51歳以上の対象者は一旦NTT東日本を退職しアウトソーシング会社にNTT東日本在籍時の70~85%の給与水準に切り下げて再雇用という形をとります。また、50歳以下の対象者はNTT東日本に在籍のままアウトソーシング会社に出向という形をとりました。
116業務など個人・中小企業向け業務は、新たにサービス子会社を設立した上で委託し、設備の点検・保守・修理などの技術業務は、関東・甲信越地区はNTT東日本の子会社NTT-MEの県域サービス孫会社9社をそのまま活用、北海道・東北地区はブロック子会社のNTT-ME北海道とNTT-ME東北のもとに新たに孫会社を設立して委託しました。さらに経理・事務や施設管理については、NTTビジネスアソシエとNTT東日本が共同で17都道県ごとに総務系地域子会社を設立して委託しました。17都道県ごとに3業態、合計51社の地域子会社に細分化されました。
NTT東西合わせて11万人規模の大規模リストラから3年、NTT西日本同様、NTT東日本でも本体は年々伸び悩む固定電話に代わる新しい収益源として光ファイバーやADSLのブロードバンド事業に力を入れています。しかし、そのブロードバンド事業も、パワードコムなどの電力系通信会社や、有線放送事業者から業態を変えたUSEN、ソフトバンクグループ、KDDIなどとの競争激化にさらされるようになりました。さらに固定電話も、KDDIや平成電電、ソフトバンクグループの日本テレコムなどが直収電話サービスの本格参入などを受けて競争はさらに激化してきました。また、業態別の子会社間と本体の間の連携もうまくいっておらず、効率悪化が懸念されていました。
このためNTT東日本では、この営業系・設備系・共通系のアウトソーシング3社を各県ごとに1社に統合するとともに、支店の法人営業業務等を新会社へ委託することになりました。なお、ユーザーの多い東京都についてはきめ細やかなお客様対応と業務のスピードアップの観点から、営業系と設備系の2社を5ブロックエリア単位の会社に再編します。また、都道県域の設備系会社の業務のうち、広域的運営が望ましい集約的・計画的な業務及び本社内の設備系3センタ(エンジニアリングセンタ、ネットワークオペレーションセンタ、ビジネスサービスセンタ)は、NTT-ME社へ移管します。事業の再編は、6月下旬のNTT東日本の取締役会の決議を経て、7月1日付で行われる予定です。
私のほうで、再編方法を推定してみました。
1.東京都を除く16道県の場合
(1)サービス子会社に委託していた電話の注文受付業務をNTTソルコ(北海道はNTT北海道テレマート)に委託替えする。(すでに委託替えした県もある)また、サービス子会社が行っていた地域ポータルサイト運営事業などを分割型吸収分割によりNTTソルコに承継する。(北海道はNTTサービス北海道よりNTT北海道テレマートへの営業譲渡を行う。)NTTソルコの派遣・パート労働者を使った方がサービス子会社の退職・再雇用者より安く使える。また、NTTソルコを地域別に6社に分割した上で、NTT西日本のテレマーケッティング子会社、NTTマーケティングアクトとの経営統合も視野に入れる。
(2)設備系子会社の業務のうち、広域的運営が望ましい集約的・計画的な業務については、分割型吸収分割によりNTT-MEへ移管する。NTT東日本は業務委託型会社分割により本社内の設備系3センタを同社に移管する。
(3)総務系子会社については、コールセンター業務と人材派遣業務はNTTソルコへ、総務・経理などのシェアードサービス業務と物品販売業務はNTT-MEへそれぞれ営業譲渡する。その上で、総務系子会社を解散する。
(4)(1)(2)の営業譲渡および会社分割を行った上で、サービス子会社と設備系子会社を合併させ、県域総合会社を設立する。
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2.東京都の場合
(1)(2)は東京都を除く16道県の場合と同様
(3)総務系子会社については、コールセンター業務と人材派遣業務はNTTソルコへ、物品販売業務はNTT-ME東京へそれぞれ営業譲渡する。総務・経理などのシェアードサービス業務については、5ブロックエリアに分割するために1社に集約する必要があるため、総務系子会社を存続するか、総務系子会社を解散してNTTビジネスアソシエに引き継ぐか。
(4)(1)(2)の営業譲渡および会社分割を行った上で、NTTサービス東京とNTT-ME東京を分割会社とする分割型共同新設分割により、5ブロックエリアごとの総合会社「NTT東日本東京中央」「NTT東日本東京北」「NTT東日本東京南」「NTT東日本東京東」「NTT東日本東京西」を設立し、分割会社2社は解散する。NTT-ME東京の傘下にあるNTT-MEサービス東京については、新設する5社の折半出資会社となる見込み。
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今回の“第2次構造改革”で、県域支店の法人営業業務等と本社内の設備系3センタの業務に主として従事している社員が片道出向となり、NTT東日本本体に残る社員はごく一部の幹部候補生のみとなり、今年3月31日現在の14,200人から約6,000人、平成11年7月の発足当時の約58,000人の10分の1になるとみられます。NTT東日本は“第1次構造改革”の半年後の平成14年11月にもアウトソーシングの対象範囲を拡大し、約7,000人を出向させています。その中には“バブル入社組”も一部含まれていたといわれています。今回の“第2次構造改革”で、支店従業員の大半が出向を命じられます。いよいよ“バブル入社組”どころか、20代後半もリストラの対象となります。そして今年入社した300人の新入社員のうちの3分の2も、わずか3ヶ月で子会社出向となります。
NTT東日本もNTT西日本同様、平成13年から3年間新規採用を停止しています。そのため、“第1次構造改革”で東西合わせて11万人規模の大規模リストラをやっても、新たな年齢構成のひずみが生じます。しかし、NTT東日本の場合は固定電話からブロードバンドへと収益構造が変わった上に、競争が激しくなっており、さらには10年後、“バブル入社組”が40代後半に達し、20代の若年層と30代の中堅層が少なくなると予想されることから、今のうちにさらなるアウトソーシング範囲の拡大とグループ再編による出向拡大によって年齢構成のひずみを解消しようとしています。
また、会社や労働組合の幹部の労働者に対する支配力はいっそう強まり、地域子会社に対して、NTT東日本からの業務委託を縮小し、業容拡大を図るよう徹底するとともに、労働者を過酷な労働強化で支配するようになりました。そして、会社のリストラ方針に異を唱える抵抗勢力や、NTT労働組合を脱退して抵抗勢力を組織しようとする労働者を徹底的に弾圧する政策をとりました。会社当局と労働組合が一体となって労働者から批判力を奪い、抵抗勢力に見せしめ的攻撃をかけ、もの言わず従順に指示に従う労働者に洗脳してきたのです。
“第2次構造改革”後、グループ再編により新たに発足する総合子会社では、さらなる業容拡大と一層の利益追求に向けて、本体から押し込まれた社員に発破がかけられるものと思われます。NTT東日本からの受託業務からはずされた従業員は、ブロードバンドサービスや携帯電話などの物品販売に重いノルマを課され、達成できなければD評価をつけられた上に賃金引き下げが待ち受けます。NTT東日本はこの新たに発足する総合子会社を“人材活用センター”と位置づけ、固定電話のIP化で生じる余剰人員の有効活用を図りたい考えです。今後、これまでに出向させられた社員や今回新たに出向させられる社員も、全員一斉に退職・再雇用させ、賃金を既に転籍した50代社員の水準まで下げようとも予測されます。さらに来年度以降は本体での採用はこれまでの300人から100人程度に減らされ、それも幹部候補に限られ、支店の現業業務については県域総合子会社やNTTソルコなどの子会社で派遣・パート・業務請負という形で雇用していき、人件費の削減と雇用の流動化をさらに進めていくものとみられます。このようにして、NTT東日本はごく少数の幹部候補(エリート)と過酷なノルマに苦しむ大多数のグループ会社正社員、そして今後増える低賃金・不安定雇用を強いられる派遣・パート労働者に3層化しようとしています。
NTT東日本は“見せしめ”と“ノルマ”それに“パワーハラスメント”の3つの道具で、労働者を支配してきました。7月に予定されるグループ再編で、“雇用の階層化”という道具が新たに加わり、労働者の支配力はさらに強化されることになるでしょう。グループ再編まであと1ヶ月、NTT東日本グループの社員の胸中はいかに。
このNTT東日本に対し、NTT西日本は今のところグループ再編を行う必要はないと、森下俊三社長はいっています。森下社長はNTT東日本の副社長が前職でした。7月1日付で行われるアウトソーシング子会社再編の様子をみようというところですが、NTT西日本としても、競争激化を理由にグループ会社の再編は必至と見られます。51歳での退職・再雇用を地域子会社への出向社員全員へ拡大したり、また設備系・営業系の事業グループも、営業地域が静岡・岐阜・富山以西の30府県と首都圏だけでは不十分であり、今後、NTT東日本グループとの事業統合も視野に入れようとしていると見られます。NTT東日本のグループ再編を機に、NTT西日本グループが果たしてどのようなグループ再編に動くかが注目されます。
JR西日本やNTT西日本と同様な運命をたどりそうな企業はまだあります。現在国会で民営化が取りざたされている日本郵政公社です。(つづく)

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