韓国の“アイドルスター大運動会”

150人のアイドルタレントが参加した『第4回MBCアイドルスター陸上水泳選手権大会』の開幕式(1月8日、ソウル市・蚕室(チャムシル)室内体育館)
韓国では沖縄同様、旧暦で正月と盆をやります。
その韓国には、韓国最大の民間放送、韓国文化放送(以下“MBC”といいます)があります。日本にも、“文化放送”という名前の放送局が東京にありますが、こちらはラジオ単営局。MBCは、地上デジタルテレビのほか、中波ラジオ、FMラジオ、デジタルマルチメディア放送の4つの電波を運営しています。
そのMBCが、現在の日本では考えられない『アイドルスター陸上水泳選手権大会』というテレビ番組を開催しました。
韓国の人気アイドルタレントが一堂に集結し、陸上競技や水泳にしのぎを削るというもので、平成22年(2010年)の旧盆に第1回大会が開催され、以後毎年夏(旧盆)と冬(旧正月)の年2回開催されています。大会は、夏の大会がソウル市の蚕室(チャムシル)陸上競技場(14年前のソウル五輪のオリンピックスタジアムになった競技場)で陸上競技のみ、冬の大会がソウル市内の室内温水プールでの水泳競技と、体育館での陸上競技が行われます。第4回の今回は、1月7日に水泳競技が非公開で収録、8日にソウル市の蚕室(チャムシル)室内体育館で陸上競技が公開収録され、24日の5:15PMから韓国全土で放送されました。
私は日本、それも沖縄に住んでいるために番組を見ることができませんでしたが、インターネットで情報を拾ったところでは、今回の大会は約150人ものアイドルタレントが13チームに分かれて参加(最も人気の高い少女時代やKARAは出場していません)、水泳競技では、ガールズアイドルグループの“Rainbow”が昨年に続きシンクロナイズドスイミングを披露したという話も聞かれます。結果は、2チームが同点優勝したそうです。
番組を開催したMBCは、日本のFUJI-TVと友好関係があり、東京・台場のFUJI-TVの社屋内にMBCの日本支局を、ソウルのMBCの社屋内にFUJI-TVの韓国支局を相互に設置しており、ニュース素材の交換などが行われています。その日本のFUJI-TVでも、その昔、芸能人による水泳大会や運動会などを開催したことがありました。
FUJI-TVにはかつて、毎週火曜日の7:30PMに1時間23分の常設スペシャル番組『火曜ワイドスペシャル』がありました。(現在でも同タイトルの番組が7:00PMから1時間54分で放送されていますが、コンセプトが異なります。)月1回組まれるザ・ドリフターズ主演のバラエティ『ドリフ大爆笑』(現在もこの番組はCS放送の“ファミリー劇場”で見ることができます)を中心に、年間を通して四季折々の娯楽番組を届けてきました。その中に、芸能人水泳大会と芸能人運動会が、それぞれ年2回ずつ組まれていました。




今から約30年前、日本のテレビではアイドル歌手が水着姿になって競泳や水上ゲームにしのぎを削る“芸能人水泳大会”が放送されていた。上記の画像4枚とも昭和55年(1980年)の夏の大会。((c)1980 FUJI-TV)
芸能人水泳大会は、おおむね2月と7月に組まれ、神奈川県中郡にある大磯ロングビーチ(冬の大会はその敷地内の室内温水プール)を舞台に、当時人気を誇ったアイドル歌手が紅組と白組に分かれ、水上ゲームや競泳などにしのぎを削ったもので、アイドル歌手が水着姿で持ち歌を披露するというのもありました。一方で、水上騎馬戦の際に、ビキニ姿の女の子が、ビキニのブラをはがされ乳首が露出という不健全なシーンもあり、PTAからクレームも受けたこともありました。
芸能人運動会はおおむね5月と10月に組まれ、主として東京都体育館で開催され、これも当時人気を誇ったアイドル歌手が紅組と白組に分かれ、陸上競技にしのぎを削りました。ランニングにブルマーというセクシーなスタイルの女性アイドル歌手に、当時の若者たちの視線が集まりました。
芸能人水泳大会と芸能人運動会は、1970年代から80年代にかけてのアイドル全盛期の人気番組でした。陸上競技と水泳競技を通して、ふだんの歌番組では見られない歌手の変わった側面を見ることができました。しかし、芸能人運動会は昭和60年(1985年)に廃止、芸能人水泳大会も昭和62年(1987年)から女性アイドル中心の大会となりましたが、アイドルの多様化や構造的な変化もあり、平成6年(1994年)には夏の大会が廃止、冬の大会も平成10年(1998年)を最後に姿を消しました。
また、FUJI-TVには、正月に芸能人がかくし芸を披露する、渡辺プロダクションと共同制作の娯楽番組『新春かくし芸大会』という番組もありましたが、視聴率の低迷や番組制作費の削減などを理由に平成22年(2010年)を最後に47年間の歴史に幕を閉じました。
こうした芸能人水泳大会と芸能人運動会は、出場するタレントが100名を超えます。昔は番組の趣旨を理解する提供スポンサーがついていたからこそできましたが、テレビ放送が完全デジタル化され、ハイビジョンのきれいな映像が標準テレビ方式となった現在では、提供スポンサーがつきにくく、番組制作費の確保もままならず、さらにアイドルタレントの数も限られ、番組を企画することが難しくなりました。
現在の日本の民放テレビ各局のバラエティ番組では、VTR素材が流れている間に画面の隅に、スタジオ出演のタレントがVTRを見ている表情が小画面で映し出され、画面の左上、右上には常時スーパーが表示され、そして盛り上がってきたところで突然CMに入り、90~120秒間のCMが終わるとCMに入る数十秒前のところから再開するという“山場CM”というのも多くなっています。毎年4月、10月の番組改編期や年末年始には、通常1時間で放送しているバラエティ番組が2時間スペシャルとして組まれていましたが、最近では4時間を超えるスペシャル番組も多く組まれるようになったり、改編期以外の時期にも、時期を見て2時間スペシャルを組まれるようになりました。これも、提供スポンサーがつきにくくなり、番組制作費も削減されているのがその理由で、毎週決まった曜日・時間帯に1時間のバラエティ番組を組むのが困難になり、近い将来、すべての曜日で7:00~9:00PMの時間帯が2時間の常設スペシャル番組となり、曜日ごとに隔週2時間、月1回2時間といった形式のバラエティ番組になることも予想されます。
韓国では、ニュースやスポーツ、ドラマ、バラエティなど、民間放送で放送されるすべてのテレビ番組では、番組本編中にCMをはさむことはできません。CMは、番組本編の前後にまとめて放送されます。日本での盛り上がってきたところで突然CMに入ることや、番組途中で提供クレジットが入るということも、韓国ではありません。視聴者は安心してテレビ番組を楽しむことができます。
私が小中学生だった頃は、アイドル全盛期でした。1980年代、テレビではアイドルタレントが歌番組やドラマに出ているのをよく見ました。しかし、現在、ドラマやバラエティ番組に出ているアイドルタレントは、男性が嵐やSMAPなどジャニーズ事務所所属のタレントが、女性がAKB48を中心とした多人数グループアイドルが主流となっています。
今でも『懐かしいアイドルの写真帳』など昔の80年代アイドル関連の画像サイトを見ますが、あの頃はかわいらしいアイドルタレントがいっぱいいただけに、私も彼女たちのようなタイプの女性と結婚したかった思いを抱いていましたが、それも叶わぬ夢でした。
1970年代から80年代にかけてのアイドル全盛期に、芸能人水泳大会と芸能人運動会を放送してきたFUJI-TVも、現在は平日の午後の時間帯に関東地方向けに韓国ドラマを放送するようになり、視聴者の間では、FUJI-TVに対し“韓流批判”をする視聴者も多く、東京・台場にあるFUJI-TVの本社でデモを行う団体も多くなりました。その昔視聴者の人気を集めた芸能人水泳大会と芸能人運動会のノウハウを、友好関係にある韓国文化放送にもっていかれてしまいました。日本のテレビ番組(とりわけ民間放送の番組)の質が、著しく低下していったことを、ひしひしと感じています。韓国人の目に日本のテレビのバラエティ番組がどのように見られているのか、おそらく、つまらない、くだらないという感想が返ってくるものと思います。
私は、今回の韓国のアイドルスターの水泳大会・運動会の話題を聞いて、日本の芸能界の国際競争力が低下していったということを感じさせられました。残念です。
ちなみに、次回の『第5回MBCアイドルスター陸上選手権大会』は、陸上競技のみの大会となり、旧盆に当たる9月1日前後に放送される予定だとか。
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